こんにちは、元外資系ファンドマネジャーのやすたろです。
みなさん、「卵は1つのカゴに盛るな」ということは聞いたことはありますか?
有名な相場の格言です。
卵をすべて1つのカゴに盛ると、カゴを落とした時にすべてダメになってしまう。
いくつかのカゴにわけておくと、1つのカゴを落としても部分的な損失で済む。
分散投資を進める考え方です。
今回はこの格言について、本当に理解しているか深堀していきたいと思います。
「卵は1つのカゴに盛るな」の本当の意味
これを聞いてなるほどと納得しましたか?
私は最初なにをいいたいのかわかりませんでした。
だって、カゴを複数持ってたらカゴを落とす可能性は高まると思ったからです。
例えば、カゴを落とす可能性が5%として10コのカゴに分ける場合、1つでもカゴを落とす確率は5%から40%と分散することによって大きく増加します。
結局、低確率ですべてを失うか高確率で一部を失うかの好みでしかないと思いました。
分散投資否定派の人もこの時の私と同じように、
「分散投資では大きく勝てない(卵を一部失う)」
「大きく勝つためには集中投資(すべての卵を手に入れる)」
と考えているのではないでしょうか?
しかし、この考え方では、投資で勝ち続けることはできません。
卵を複数のカゴに盛る効果
まず、例題にもう少し詳細を設定しましょう。
1つ80円の卵を割らずに運んだら100円で売れるとします。
しかし、カゴを落とす可能性が5%あります。
あなたは、800円を使用して10個の卵を買いました。
1つのカゴですべてを運びますか?
それとも10コのカゴに分けますか?
1回の運搬を考えた時、すべての卵を1つにカゴにいれた場合、すべて卵を手に入れられる可能性は高いでしょう。
一方で、10コのカゴにいれた場合は1つくらいはカゴを落としてしまうかもしれません。
確かにすべての卵を無事運ぶ必要があるのであれば集中していたほうが合理的です。
しかし、投資は一回で終了ではないですよね?
次は卵を売ってできた資金で、新しい卵を購入してさらに儲けようとすると思います。
そして、それを10回、100回と行った場合、
まず、卵を1つのカゴに入れていた場合、1回の取引で損がでる確率は5%、10回では40%、100回ではなんと99%です。
しかもすべて資金すべてを失います。
一方、卵を10コのカゴに分けていた場合、1回の取引で損がでる確率は2%、10回では約0%となり、それ以降もほとんど損する可能性がありません(さらに損する確率は小さくなっていきます)。
安定的に資産を積み上げたいと考える人は分散投資ですよね?
期待値が上がらないのにリスクだけをとる、これはもうギャンブルと同じことです。
たまに、集中投資はハイリスクハイリターン、分散投資はミドルリスクミドルリターンみたいなことを目にしますが、間違えているということがわかりましたね?
実際は集中投資はハイリスクミドルリターン、分散投資はミドルリスクミドルリターンということです。
「どういうこと?」というかたはリスクとリターンの考え方がわかっていないので「長期投資をしてもリスクは軽減されませんよ?」を参照ください。
一方で、大儲け以外は負けと同じと考える人には集中投資がおすすめです。
期待値は同じなので天文学的な額を儲けることができるかもしれません。
しかし、儲けたお金を少し置いておこうなどと考えてはいけません。
それは時間分散になりますし、期待値を下げることになりますので。
常に「漢の全力、一点張り」です!
また、期待リターンがマイナスの場合は分散投資を行うと確実に負けるようになっていきます。
よって、ギャンブルなど期待値がマイナスの勝負をする場合は、勝つためには分散などせずに「漢の一点張り」が最適な戦略となります。
相関とは1つの事象と他の事象がどう関連するかということ
先ほどの例では、1つのカゴを落としたからといって、次のカゴを落とす確率が変わるということは想定しませんでした。
この1つの事象と他の事象がどの程度関連するかを相関といい、例にように互いに独立している場合は無相関といいます。
一方、1つのカゴを落としてしまったら心理的プレッシャーから落としやすくなるなど同じ方向に引きずられることを正の相関といい、逆に気をつけるようになり落としにくくなる場合は負の相関があるといいます。
そして、この相関を数値値したものが相関係数といい、-1(完全に逆の動き)から1(完全に同じ動き)で表せます。無相関の場合は相関係数0です。
何がいいたいかというと、この相関係数によって分散効果が異なってくるということです。
先ほどの例では、カゴの落としやすさは無相関だったため、相関係数は0です。
相関係数1だと1つのカゴを落とすと他のかごもすべて落とすということになりますので、分散する意味はなくなります。
相関係数が−1だと確実に勝てる
別の例をあげます。
例えば、ディーラーが1から6までのサイコロをふって、偶数か奇数かをあてるギャンブルがあるとします。
参加費は50円で、当たれば200円、外れれば0円受け取れます。
(念のため、やればやるほど胴元が損するのでこんなゲームは現実にはないですよ?)
偶数にかけるか奇数にかけるかで結果はまったく逆になります。
相関係数は-1ということです。
ここで、参加費を2倍払って、偶数と奇数の両方へかけたらどうなるでしょうか?
参加費は倍の100円払うことになりますが、どの目がでても200円がもらえるため確実に儲かるようになります。
相関係数が-1であればリスクを完全に無くすることができるのです。
一般投資家が銘柄を分散するのは大変!だからファンドを活用しよう
現実の世界では、期待リターンがプラスで相関係数が-1という極端な資産は存在しません。
もし発見できれば、歴史の名を残す名声と巨万の富を築くことができるでしょう。
相関関係が低い債券と株式でみても相関係数は若干のマイナス程度ですし、株式どうしであればかなり高い正の相関関係となります(0.6~0.9あたり)。
ただ、高い正の相関だからといって分散投資が無意味ということはありません。
相関係数が1ではない限り、分散によるリスクの軽減効果が期待できるからです。
例えば、それぞれ期待リターンが5%でリスクが25%の2銘柄へ50%ずつ投資するとします。
2つの相関係数が0.7だとすると、期待リターンは変わらず5%ですが、リスクは23%となり、期待リターンを落とさずに2%分のリスクの削減に成功します(計算は複雑なので省略)。
さらに分散投資は分散する銘柄数が増えるほどリスクの軽減効果が高まっていきます。
しかし、個人で投資しようと考えた場合、1銘柄毎の最小取引額が決まっていますので、ポートフォリオを組むためにはけっこうなまとまったお金が必要になります。
100銘柄で株式のポートフォリオを組もうとした場合、最低取引額が10万の場合は1000万ほどかかります(単に最低単位を組み入れるのではなく比率を意識すると億単位の資金が必要になります)。
ほとんどの一般投資家は自分でポートフォリオを組むことができないですよね?
では、どうするのか?
そう、ファンドを活用するのです。
投資信託とかETFですね。
例えば、TOPIX(東証株価指数)連動の投資信託であれば、1000銘柄以上への分散投資が行われています。
個人で同じポートフォリオは作れないですよね?
分散効果にも限界がある

分散投資は分散する銘柄数が増えるほどリスクの軽減効果が高まっていくという話をしましたが、分散数を無限に増やしていけばリスクがゼロになるということではありません。
分散によって減らせるリスクと減らせないリスクがあるのです。
システマティックリスクと非システマティックリスク
この分散によっても消えないリスクのことをシステマティックリスクといい、分散によって軽減していくリスクを非システマティックリスクといいます。
長い名前ですし用語は覚えなくていいですが、考え方はマスターしてください。
システマティックリスクとは、市場リスクとも呼ばれ、市場全体としての変動を表します。
大地震が起きたとか予期しない悪材料がでたとき、あまり関係がなさそうな株まで同時に売られますよね?
要は、何を持っていても避けられないリスクです。
一方、非システマティックリスクとは、個別の企業の動向に基づいたリスクのことです。
想定していない赤字を出したとか事故を起こしたとか。
その企業に集中投資をしていれば大ごとですが、分散投資をしていれば影響は小さくなります。
こちらは分散によって避けることができるリスクになります。
非システマティックリスクをとってもリターンは改善しない
ただ、「へー、分散効果は限られているんだ。」で終わらさないでください。
「取ったリスクによって期待リターンは決まる」
これはインデックス投資の核となる考え方です。めっちゃ重要です!
しかし、厳密には
「取ったリスク(避けられない)によって期待リターンは決まる」
ということです。
分散投資によって軽減できる非システマティックリスクをとっても期待リターンは改善しません。
最適なポートフォリオを組んだ上で残った避けられないリスクがリターンの源泉になるわけです。
余談ですがほかにも、為替の変動リスクなども期待リターンの上昇につながりませんので注意してください。
こちらについて、もっと詳しく知りたければ、「FXはハイリスクノーリターンって知っていますか?」をご覧ください。
今回のテーマのまとめ
・卵を複数のカゴに盛るのは、リターンを維持したままリスクを低減させる効果があるから
・分散を極限までしてもシステマティックリスクは残る
・非システィマティックリスクをとってもリターンは上昇しない
・期待リターンがプラスで相関係数が大きなマイナスの資産を発見したら、こっそり私に教えてください。(-人- )
最後までみていただき、ありがとうございました。
ご意見などありましたら、連絡いただければと思います。
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