こんにちは、元外資系ファンドマネジャーのやすたろです。
「アクティブファンドの平均はインデックスファンドに勝てない」
「勝てるアクティブファンドを事前に見つけることができない」
そうなると、信託報酬などのコストが安いインデックスファンドを見つけることが投資信託を選ぶうえで最も重要なことになってきます。
そして、信託報酬を比較して、一番安いインデックスファンドを買おうとしているあなた、ちょっと待ってください!
信託報酬はコストの中で大きなウエイトを占めますが、隠れているコストは他にもあります。
今回は投資信託を選ぶときは、信託報酬だけではなく実質コストで比較しようということについて解説していきます。
どこをみるかについては、最大手の運用会社である野村アセットマネジメントの野村外国株式インデックスファンドを例に説明していきます(大手だから例にあげただけでこのファンドをおすすめしているわけではないですよ)。
みるべきは、運用報告書の費用明細
証券会社や銀行の窓口にしろ、ネット証券にしろ、投資信託を購入する前に目論見書を確認させられます。

こういうやつです。
そして、そのなかのファンドの費用をみて具体的な数字が書かれている項目のみをみて、「あー、これくらい費用がかかるのね。」と思ってそこで終わってないですか?
購入時手数料、信託財産留保額、信託報酬ですね。
しかし、その下の「その他の費用・手数料」をみると、売買委託手数料や保管費用など複数の費用項目があることに気づきます。
「大した費用じゃないから列挙しているんでしょ?」
そう思ってないですか?
具体的に費用を数値で書いていないのは、いくらかかるか事前にはわからないからです。
売買手数料とかは売買の多さで変わってくるでしょ?
なので、このあたりの隠れコストは厳密にいくらというより傾向を掴むことが大事になってきます。
では、なにをみるのか?
費用が事前にいくらかわからなくても、結果は運用報告書に書かれています。
運用報告書は毎月でている薄めのサマリーレポートではないですよ?年に1、2回でているぶ厚いやつです。

そして、なかをぺらぺらとめくっていくと、1万口当たりの費用明細という項目があります。
はい、実際にかかった費用はここで確認するのです。
これをみると、2018年5月11日から2019年5月10日までのあいだに、信託報酬以外に売買委託手数料が0.002%、有価証券取引税が0.008%、保管費用などその他費用が0.019%ほどとなり、合わせると0.03%ほどかかっています。
ファンドによっては、この項目が結構大きいものもあるので、信託報酬だけではなく、隠れコストも含めた実質コストで比較することが大切です。
信託報酬に比べれば、隠れコストは小さな費用かもしれません。
しかし、近年のインデックスファンドのコスト競争で信託報酬が0.1%とかの超低コスト商品がでてきた以上、コストで比較するためには、みるべき項目になってきているのです。
余談ですが、隠れコストの有価証券取引税は、儲けじゃなくて売買に対して課せられる現地の税金です。
購入金額に対していくら、売却金額に対していくらみたいに課税されます。
特に欧州株はこの課税している国も多く、けっこう負担も大きいので、欧州株式を中心に組み入れている売買回転率の高いアクティブファンドを保有しているのであれば、この項目を一度確認してもいいかもしれません。
まー、アクティブの欧州株だったらそれが霞むくらいほかの費用が高かったりするかもしれませんが、、。
購入前には必ず運用報告の費用を確認
まとめサイトには、実質コストを比較している記事があります。
便利ですよね。
私も最近の傾向を確認するときとかにみています。
しかし、まとめサイトの実質コストだけをみて、どの投資信託を買うかを決めないでください。
上で説明したように隠れコストは事前に明記できない変動する費用です。
ファンドを立ち上げてすぐや残高が急激に変化した場合などは隠れコストは高くでやすい傾向があります。
まとめサイトは、更新タイミングのズレや記入の間違いもないとは言えないため、最後は自分で最新の運用報告書を確認することをおすすめします。
そして、可能であればそれぞれの費用がなにに対する費用かを理解しておくとベストです。
最新の目論見書といっても年に1回しか発行されない投資信託も多いので、なにに対する費用かがわかれば足下の状況から隠れコストがどれくらいになりそうと見当をつけることができるようになります。
海外株式に投資する場合は重課税にも注意

株式の配当金や分配金がでた場合、課税されます。
「はいはい、配当課税の話でしょ。利益がでていれば、20%が課税されるんでしょ。」
違います。
いや、違うことはないのですが、ここで話したいのは現地で配当金に課税されるということです。
「どういうこと?」
海外の株式やファンドに投資してそこから配当金や分配金がでると現地で課税されるのです。
そして、海外での課税に加えて、ファンドが配当金をだしたとき、または売却して利益がでたときは国内で20%が配当課税されるため、二重課税となります。
この現地での課税は収益が認識される前の課税となるため、運用報告書をみても記載されていません。
2020年からは二重課税を避けるために、国内ファンドの分配金から控除を受けられるような制度が導入されました。
しかし、分配金をださないインデックスファンドの場合は、分配金からの控除を受けることがないため、売却時の譲渡益課税がかかることを考えると今のところ二重課税は回避することはできません。
詳しくはこちらをご参照ください。
「回避できないのであれば、考慮する必要ないんじゃないの?」
そう思われるかもしれません。
しかし、三重課税になるものや現地の課税を増やすことになるものなど避けなければいけない落とし穴もあるのです。
三重課税が発生する場合
ファンド・オブ・ファンズ(以下、FOF)で投資をした場合、三重課税が発生する可能性があります。
ファンドオブファンズとは、複数の投資信託を投資対象とする投資信託のことです。 通常の投資信託は株や債券などに投資しますが、ファンドオブファンズは複数の投資信託が投資対象です。 投資信託に投資する投資信託、という意味からファンドオブファンズと呼ばれています。
引用元:SMBC日興証券
厳密にいうと、海外Aの株式を組み入れている海外Bのファンドに投資するファンド、これに投資する場合は三重課税が発生します。
海外Aの株式が配当金をだしたときに海外Aで配当金に対して課税されます。
そして、それらを組み入れている海外Bのファンドが分配金をだすとその分配金に対して課税されます。
そして、あなたが保有しているファンドが分配金をだした場合、または売却をして利益を確定した場合に課税されます。
ちなみに保有しているファンドが分配金をだした場合、組み入れている海外Bのファンドがだした配当金に対する控除は受けることができますが、海外Aでの課税分の控除は受けることはできません。
「そんな複雑な商品に投資することはない」
そう思われているかもしれませんが、
「外資系のXXアセットマネジメントが運用するYY世界株式ファンドに投資をします」
「米国で上場されている〇〇ETFを通じて海外株式に投資します」
よく目にする説明文だと思いませんか?
こういう説明をしているファンドはこのFOFの仕組みを利用したファンドなのです。
現地での課税が増加する場合
「海外Aの株式を組み入れている海外Bのファンドに投資するファンド、これに投資する場合は三重課税が発生します。」
このときに海外Bがケイマンやバミューダといったタックスヘイブンの国であった場合は、海外Aで発生する課税の金額が上がる場合があります。
なぜなのか?
それは、軽減税率が適応されないためです。
例えば、日本と米国、また米国と英国など国を跨いだ投資を行うときは、二重の課税を抑制するために軽減税率が適応されますが、ケイマン籍やバミューダ籍のファンドの場合はこの軽減税率が適応されない場合が多々あるということです。
米国籍、日本籍のファンドが英国に投資した場合は軽減税率が適応されて英国での課税は10%となりますが、ケイマン籍の場合は20%とか30%とかになるということです。
タックスヘイブンと聞くとなんとなくお得そうな印象を抱くかもしれませんが、株式ファンドの場合は損なことのほうが多いです。
(債券の場合は、利息に課税されないため、悪影響はなかったハズ)
FOFは投資を控えるのが無難
外国籍ファンドを組み入れるFOFは仕組みが複雑で、税制などの制度も日々変わっていくため、私が認識できていないこともあるかと思います。
しかし、FOFは構造が複雑であり、最終的に投資家が支払っている費用が不透明、また割高になりやすいと考えているため、私は購入を控えています。
今回のテーマのまとめ
・投資信託のコストを比較する場合は、信託報酬などみえるコストだけでなく隠れたコストも意識しよう。
・隠れたコストは運用報告書で確認しよう。
・二重課税についても意識しよう。
・海外籍ファンドを組み入れるFOFは組み入れを控えるほうが無難
最後までみていただき、ありがとうございました。
ご意見などありましたら、連絡いただければと思います。
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