こんにちは、元外資系ファンドマネジャーのやすたろです。
投資初心者のなかには、投資信託の配当金利回りを投資のリターンとして考えている人がいます。
しかし、配当金が高いからといって投資のリターンが高いとは限りません。
むしろ、配当金がでることによる悪影響のほうが大きいと私は考えています。
今回は、投資で資産を増やしていきたいなら投資信託の分配金はないほうがいいということについて説明していきます。
投資信託の分配金とはただの取り崩し
- 銀行の利息がゼロに対して、投資信託なら数%の分配が期待できる
- 配当利回りが10%の高利回の投資信託を買えば、10年経てば価格がゼロになっても元手は回収できる
こういうふうに考えて、高利回りの投資信託を選んでいる人はいませんか?
その選び方、間違えています。
まず、投資信託の分配金とはただの取り崩しに過ぎないということを知ってください。
例えば、基準価額10,000円の投資信託が50%上昇したら15,000円になり、分配金を5000円出したら基準価額は10,000円に下がります。
この投資信託に100万円を投資した場合、手元に50万円の配当が振り込まれますが、投資信託の評価額は100万円のままということです。合計で50万円の利益です。
もし、この配当をださない投資信託を選んでいれば、配当はありませんが、投資信託の評価額が150万円になります。こちらも50万円の利益ですね。
手元の現金が欲しい場合は50万円分の解約をしてください。それで、資金の動きも同じになります。
- 分配金をだしたらそのぶん投資額は減少する
- 分配金の高さと投資のリターンは関係ない
このことを理解してください。
なぜ投資信託の分配金はないほうがいいのか?

「分配金がただの取り崩しで、分配金の有無が投資のリターンと無関係であれば、好みで分配金のありなしを選べばいいんじゃないの?」
そういう声も聞こえてきます。
しかし、理論的にはそうでも、現実には様々な悪影響がでてくるのです。
分配金がないほうがいい理由は投資効率が落ちるため
分配金を受け取ることで投資効率が落ちてしまいます。
1年でみると、配当利回り3%で値上がり2%も値上がりのみ5%もリターンは同じです。
しかし、翌年以降を考えた場合、分配金を受け取っている場合は投資額が配当ぶん下がっているため、投資効率が落ちてしまうのです。
これは複利効果と同じで投資期間が長くなればなるほど影響は大きくなってきます。
再投資しても税金ぶん投資効率は落ちる
「じゃあ、分配金を再投資すればいい」
そう思うかもしれませんが、それでも投資効率は低下してしまいます。
なぜなら分配金に対して税金が発生するからです。
分配金がでた場合は20%が課税されます(厳密には普通分配金がでた場合)。
なので、分配金を再投資したとしても、税金ぶんが差し引かれるため投資効率は配当なしに比べると落ちてしまうのです。
そして、税金の繰延効果も投資期間が長くなればなるほど影響は大きくなっていきます。

【例外】海外株式の二重課税の控除を受けるために配当を受け取る場合
ただし、分配金がでるほうがメリットが大きい例外もあります。
それは、海外株式の二重課税の控除を受けるときです。
2020年からは二重課税を避けるために、国内ファンドの分配金から控除を受けられるような制度が導入されました。
詳しくはこちらをご参照ください。
分配金をださない場合は配当金からの控除を受けることができませんが、分配金をだした場合は海外で課税されたぶんが控除されて戻ってくるということです。
ただ、分配金がでないことによる投資効率や税金の繰延などを考えると、二重課税の控除を受けるために分配ありの投資信託を購入することは煩雑な手続きが必要な割にメリットは小さいといえます。
けっこう難しい話なので、投資初心者は長期的な資産形成をしたいなら投資信託の分配金はないほうがいいと結論付けても問題ないかと思います。
今回のテーマのまとめ
・投資信託の分配金はただの取り崩しである
・分配を受け取ることによって、投資資金が減少すること、税金の繰延ができないことによって投資効率は低下する
・例外的に海外株式の二重課税の控除を受ける場合は配当があるほうが有利になるが、手続きの煩雑さを考えるとそこまで違いはない
最後までみていただき、ありがとうございました。
ご意見などありましたら、連絡いただければと思います。
コメント