こんにちは、元外資系ファンドマネジャーのやすたろです。
今回は投資の為替リスクはヘッジしなくていいということについて解説していきます。
為替リスクとは為替に対する不確実性
まず為替のリスクとはなにかについて説明します。
海外の資産、厳密には外貨建ての資産に投資するときは、為替の変動を考慮する必要があります。
例えば、1ドル100円のときに100ドルぶんの米国株を買って、それが120ドルになった場合、ドルの世界で考えると20%の上昇になります。
しかし、1ドル100円だった為替が1ドル80円となると、円で考えた場合の利益は投資額10,000円(100ドル x 100円/ドル)に対して評価額が9,600円(120ドル x 80円/ドル)となり4%のマイナスとなります。
もちろん、逆に為替が円安ドル高となった場合、株式に加えてドルの上昇が加わるため大きく上昇します。
このような為替レートに対する不確実性のことを為替リスクといいます。
為替リスクをとってもリターンにつながらない
「投資のリターンはとったリスクで決まる」
私がこのブログで何度もいっていることですが、この為替のリスクをとってもリターンの向上につながりません。
なぜならただの通貨の交換だから。
我々日本人がドルを持つことは、円ベースで考えると為替リスクが発生していますが、アメリカ人などドルベースで生活している人からすれば円を持つことがリスクとなります。
立場によって変わる、これではどちらがリスク資産ということはできません。
もう一度いいます。
為替リスクをとってもリターンにはつながりません。
長期的にどこかの通貨が上がり続けるということはありえないのです。
もう少し為替について知りたいというかたは、こちらの記事もご参照ください。
ヘッジとはリスクを回避すること
為替リスクを打ち消して為替に対する感応度をなくすこと、これを為替ヘッジといいます。
先ほどの例でいうと、100ドルの株価が120ドルになり、為替が1ドル100円から80円になったとしても、為替の影響をヘッジしておけば、円ベースでみても利益は株価の上昇ぶんの20%となるということです。
逆に為替が円安ドル高となった場合も利益は20%のままで上振れはしません。
厳密にいえば、金利差ぶんの調整が入ったりしてヘッジしても為替の影響を完全にゼロにすることができるわけではありませんが、複雑な話になるのでここでは割愛します。もし、その辺りの解説に興味がある人が多ければ別途解説します。
ヘッジをしなくていい3つの理由
「リターンにつながらないリスクなら取らないほうがいいんじゃないの?」
そう思う人は投資をよくわかっている賢明な人です。
為替リスクを積極的にとる必要は全くありません。
私がFXや外貨預金を投資としてはおすすめしない理由もそこにあります。
リターンにつながらないリスクをとることはギャンブルと変わらないからです。
しかし、外貨建て資産に投資する場合はあえてヘッジをしなくてもいいのではないかと私は思います。
いっていることが矛盾しているように感じるかもしれませんが、もう少しだけお付き合いください。
理由としましては、以下の3つがあります。
- 商品が減って信託報酬が高くなる
- 余分な取引コストがかかる
- 計算上の安定と実質の安定は違う
商品が減って信託報酬が高くなる
海外資産に投資するとき、投資信託やETFを使うことが多いと思います。私も自分で個別の銘柄を買うより、こういう分散されている低コストのパッケージ商品を購入することをお勧めします。
そして、海外資産の投資するヘッジ付きの商品を探すと商品数があまり多くないことに気づくと思います。特にインデックスファンドの場合、ヘッジ付きは数えるくらいしかありませんし、あっても相対的に信託報酬が高くなっています。
為替リスクのヘッジはけっこう手間がかかるため、もともとの報酬水準が高いアクティブファンドは別ですが、無駄を削ぎ落として低コストを実現しているインデックスファンドの場合はヘッジ付きのほうが信託報酬が高めになるのはしかたがないことかもしれません。また、手間とノウハウが余分に必要なぶん、提供できる運用会社も少なくなることも信託報酬が低下しない要因なのかもしれません。
余分な取引コストがかかる
信託報酬が高くなる以外にも、コストを増加させる要因があります。それが、ヘッジ取引に係る取引コストです。
為替リスクのヘッジは一般的に為替の先物を利用しておこないます。期限の長い外貨を売って短くなってきたところで買い戻す。このオペレーションを延々と繰り返します。コストとしては、あまり大きくないため人によっては無視できるレベルかもしれませんが、余分なコストが発生していることに変わりはありません。また、為替相場が大きく変動する時はこの取引コストが大きくなったりします。
計算上の安定と実質の安定は違う
信託報酬、取引コスト、上記の2つのコストを合わせても年間でコストの増加ぶんは0.2%程度だと思うので、それくらいで為替リスクを排除できるのであればヘッジ付きのほうがいいと考えることもできます。
しかし、そう結論づける前にもう一つ意識しておいてほしいことがあります。
それは、計算上の安定と実質の安定は違うということです。
為替をヘッジしていれば、為替の影響を受けないため、収益が安定しているようにみえます。基準となっている円の価値が暴落しても、円をベースに考えるとなにも変化がないようにみえるからです。
しかし、それは計算上の話です。
例えば、日本の信頼が揺らいで円の価値が半分になり、それによって輸入品が高騰、しいてはすべての物価が1年で2倍になったと仮定しましょう。
そのときに、すべての資産をヘッジして為替に関係なく資産が1年で50%増加した場合、運用成績としては優秀ですが、実質はどうでしょうか?
物価が2倍になった世界で資産が1.5倍にしかなっていないのだから実質の運用成果はマイナスですよね?
ヘッジをせずに外貨で保有していれば、円の暴落局面では外貨建ての資産が大きく上昇し、実質の運用成果もプラスになったはずです。
逆に円が高騰して、すべての物価が半分になった世界を考えてみると、すべての資産をヘッジして為替に関係なく資産が1年で50%増加した場合の運用成績は実質でみても超優秀です。一方で、為替をヘッジしなかった場合は、為替で損がでるため利益はトントンとなります。しかし、物価が半分になった世界で同じだけ資産を持っていることは実質的には資産が増加したといってもいいでしょう。
なにがいいたいか、それは計算上は為替ヘッジをしていたほうが安定しているようにみえますが、実際の生活を考えると為替ヘッジをしないほうが安定しているのではないかということです。
もちろん、株式などの資産自体がインフレ対応しますし、為替と物価が完全に連動するわけではありません。
しかし、為替リスクをなくすということは基準としている円ですべての資産を保有している、円に集中投資しているということもできるのです。
レバレッジをかけたFXなどで目一杯外貨リスクをとることは反対ですが、ポートフォリオの一部として保有している外貨建て資産のぶんくらいは為替リスクをとってもいいのではないでしょうか?
余分なコストもかかりませんしね。
今回のテーマのまとめ
主張:為替ヘッジはしなくていい
理由:余分なコストが発生する
実質で考えたときヘッジしないほうがパフォーマンスが安定する
最後までみていただき、ありがとうございました。
ご意見などありましたら、連絡いただければと思います。
コメント