こんにちは、元外資系ファンドマネジャーのやすたろです。
「アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない 」
四半世紀前に唱えられた当初は否定的な意見が多かったこの理論も、今では常識化され、インデックスファンドの比率がどんどん高まっています 。
しかし、なぜアクティブファンドはインデックスファンドに勝てないのでしょうか ?
より儲けようとするアクティブファンドと平均を取ろうとするインデックスファンド、ふつうに考えたらアクティブファンドのパフォーマンスのほうが良さそうです。
今回は、アクティブファンドが勝てない理由について解説して行きます 。
アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない理由
すばり、結論からいいます。
それは、アクティブファンドのマネージャーが優秀すぎるから、です。
「いっていることが矛盾している?」
いえいえ、説明を聞いてください。
アクティブファンドのマネージャーは超優秀
まず、アクティブファンドがインデックスファンドに勝てないということからアクティブファンドのマネージャーは無能だとか所詮サラリーマンだからとか思っているのであれば大きな誤解ですよ。
彼らは頭脳明晰で、投資という仕事の性質上、いろいろなところにアンテナを張り巡らせているバランス感覚のいい人が多いです。
また、趣味の延長として仕事をしている人も多く、24時間相場のことを考えていたりします。
ここまで仕事(彼らにとっては趣味みたいなもの)に打ち込んでいる人は、どの業界にいってもほとんどいないのではないでしょうか?
彼らが無能ということは全くありません。
むしろ、彼らの地頭の良さにここまでの熱意が加われば、どんな仕事をしていてもエース級の人材になっていたような人ばかりです。
私もファンドマネージャーに憧れて、資産運用の業界に入り 、幸運にもファンドマネージャーとして働いてきましたが、 周りの同僚を見て、
「あー、この人たちには勝てないな」
と自分の無力さを痛感する日々を送ったときもありました。
優秀なファンドマネージャーが市場を効率化させる
では、なぜその超優秀なファンドマネージャーが運用するアクティブファンドがインデックスファンドに勝てないのか、
それは、マネージャーが優秀なせいで市場が効率化するからです。
効率化した市場では儲けのチャンスがなくなっていきます。
自分で自分の首を絞めているような状態です。
非効率な市場では、ミスプライスがたくさん発生します。
楽天とアマゾン、ヤフオクで同じ商品が並んでいるような状況を想像してください。
市場が非効率で、それぞれの価格が異なるのであれば、あなたはサイトを比較することでよりお買い得に買い物をすることができます。
しかし、ここに大量の転売ヤーがいるとすれば、安いサイトで買い、高いサイトで出品し、サヤを抜くことで、市場の原理で価格は均一になっていきます。
優秀な転売ヤーが多いほど、価格差はなくなっていきます。
そうなれば、あなたがいくらサイトを比較しても、他サイトよりお買い得な値段で買い物をすることはできません。
どのサイトで買っても同じだからです。
転売の場合は、転売ヤーにとっては在庫リスクもあるし、郵送の手間や送料もかかるので、サイトを見比べることで若干のお買い得は見つけることができるかもしれません。
しかし、高度に発展した金融市場では、流動性の高さから数百億や数千億という単位でも、売れないということはありません(在庫リスクなし)し、取引料の超低コスト化(送料ほぼゼロ)が進んでいるため、より効率的な市場といえます。さらにクリック一つで取引が完了するという手軽さです。
どんなに優秀な転売やーでも価格差がなければ儲けることはできません。
同様に、どんなに優秀なファンドマネージャーでも市場が効率的であれば、超過収益を稼ぐことはできないのです。
情報の非対称性がない
そのほかに、市場を効率化させている要因としては、情報の非対称性がない、少ないということがあげられます。
情報の非対称性とは、特定の人はより多く情報を知っていて、他の人は知らないみたいな状況です。
例えば、あなたが中古の戸建てを買おうとしたときに、売主と、買主であるあなたには、明らかな情報格差があるわけです。
あなたは正確に情報を掴みたいと思っていても、売主はより高く売るために不利な情報は隠すかもしれません。
そうなれば、あなたはもしかしたら隠れた欠陥があるかもしれないということで、自分がだしてもいいと思っている金額より低めの金額しか出したがらないでしょう。
もちろん、こういう不幸なすれ違いが行われないように情報開示の義務化なども課されていますが、建物の価格が築年数のみで決まるという現状をみるとあまり上手くいっていないと個人的には思っています。
情報の非対称性がある市場に、健全な発展はありません。
そのため、金融市場ではこの非対称性を取り締まる規制を強く行っているのです。
具体的にいうと、インサイダー取引に対する取り締まりということです。
非公開の情報をもとに売買したら捕まるでしょ?
なぜ、だれも大きく損をしていないのにけっこう重い罪になるかというと、金融市場の健全な発展を阻害するという大きな害があるからです。
非公開の情報を基に投資で他人を出し抜こうなんて考えていると大怪我をしてしまいますので、絶対にやめてください。
アクティブファンドのマネージャーや購入者に感謝をしよう
効率的金融市場では、アクティブファンドはインデックスファンドを出し抜くような成績をあげることはできません。
価格の歪みがないからです。
しかし、調査や分析を行うほど手間や時間がかかり、その労力は高い信託報酬というかたちで反映されます。
大元のパフォーマンスに差はなくても、コストが高いぶんアクティブファンドはインデックスファンドに劣後してしまう、こういうカラクリです。
しかしもし、世の中のアクティブファンドがなくなり、インデックスファンドだけになってしまったら、市場は非効率的になってインデックスファンドに投資をしても勝てなくなってしまいます。
インデックスファンドの購入者は、アクティブファンドのマネージャーの熱意に敬意をしめし、費用を負担しているアクティブファンドの購入者に感謝をするべきです。
彼らの並みならぬ努力や巨額の資金によって効率化されている市場にただノリさせてもらっているのですから。
どうせ努力をするなら、非効率的な市場でやりましょう
市場が効率的なおかげで、多大な労力をかけるプロもインデックス投資でほったらかしにしている素人の個人投資家も同じようなパフォーマンスを上げることができます。
逆にいうと、非効率な市場では実力がモノをいうのです。
どうせ努力するなら、非効率的な市場でやりましょう。
不動産に手を出せといっているわけではありませんよ?
確かに不動産は金融市場に比べたら効率性はもっと下がりますが、それよりも遥かに非効率な市場があります。
それは、あなたが行っている事業や仕事です。
ビジネスの世界です。
あなたも日々、社会の理不尽さ、会社の生産性の低さに不満が溜まっているのではないですか?
その不満は、市場が非効率だということに起因しているはずです。
であれば、仕事に真剣に取り組むことや新しいスキルを身に着けることなどで、その非効率さを解消することができればあなたは今より大きな利益を得られることでしょう。
個人投資家が片手間で市場分析をしてもたかが知れています。
ほとんど無駄な労力で終わります。
であれば、手間がかからないインデックス投資をしつつ、本業の仕事のほうに時間を使えばあなたの人生はより良いものになると思いませんか?
今回のテーマのまとめ
主題:なぜアクティブファンドはインデックスファンドに勝てないのか?
理由:アクティブファンドのマネージャーは優秀で、優秀が故に市場を効率化させてしまうから。
補足:効率的な市場では生半可な知識では戦っていけない。どうせ努力するなら、非効率なビジネスの分野でスキルアップしていきましょう。
最後までみていただき、ありがとうございました。
ご意見などありましたら、連絡いただければと思います。
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